「吉川英治」 新潮日本文学アルバム
「宮本武蔵」 「新平家物語」 「新書太閤記」 などの
著者
吉川英治は、百科事典を50回読んだ と言われている。
家が貧しく学校に行けず、10代の若いころ印刷工をしていた。
その時に、読み込んだという。
今のようなカラーも写真も図もない無味乾燥な百科事典を。
扇谷正造は、、吉川英治と印刷工時代に同僚であった人から聞いたのであった。
あるとき、文壇のひとたちと扇谷は食事をした。
石川達三、大岡昇平、石坂洋次郎などがいた。
ひと通り料理がすんで、おひらきかと思ったとき、もう一皿出るという。
メニューを見ると
「強魚」と書いてある。
誰も読めない。どういう料理がでるかも分からない。
石坂洋次郎が吉川英治に尋ねると、吉川は答えた。
「これは
シイザカナと読む。もうお料理はひと通りでました。しかし、
おなかが何でしてら、もう一皿、お酒のオツマミにいかがですか
と強(し)いる。ですから、おなかにたまらないのがでる。たぶん、
ムシガレイか何かでしょうよ。」
ムシガレイが出された。
このとき、扇谷は、 吉川英治が百科事典を50回読んだことは本当だ と確信した。
石川達三・・・『蒼氓』で第1回芥川龍之介賞受賞。
大岡昇平・・・『俘虜記』など
石坂洋次郎・・・『青い山脈』など
扇谷正造・・・ジャーナリスト、編集者、評論家