
「もう牛を食べても安心か」 福岡伸一著 文春新書
狂牛病のことではないが、関連して、シェーンハイマーの研究のことが書かれている。
1930年代のこと。
ネズミでの実験であるが、摂取したある種のアミノ酸中の窒素がどうなるか
調べたところ、尿中に27.4%、糞中に2.2%排出され、体内にアミノ酸56.5%として
残っていた。残ったアミノ酸は、別のアミノ酸にもなっていた。
つまり、摂取されたアミノ酸は、さらに細かく分断され、再分配され、
各アミノ酸を再構成していた。
そして、アミノ酸の場合、これを3日もあれば、行ってしまうという。
さらに、体のあちこちでは、分子レベルで、数ケ月もあれば、入れ替わってしまうという。
牛からや、まわりまわってミミズからの、分子などなどで、私たちはできている。
前は、いろんな生き物などの分子であったものが、一瞬、私たちの体となり、流れ
出てゆく。
筆者も書いているが、私も、思い浮かべた。
中世最大の随筆のひとつ 鴨長明 の 「方丈記」 の冒頭。
行く河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。よどみに浮かぶ
うたかたは、かつ消え、かつ結びて、久しくとどまる例(ためし)なし。
世の中にある人と栖(すみか)と、またかくの如し。
凄い。すでに言い得ているではないか。
これからは、「お変わりございませんか」、と尋ねられたら。
「いえいえ、すかっり変わってしまっています。」と答えよう。