
我が家のムク(夢来)(オス)
お向いの家の柴犬(メス)が亡くなってしまった。
名前は、リリー。
向いと我が家との間の道には、多くの犬が散歩して通る。
その飼い主さんたちは、皆、リリーとムクを知っている。
私たちの名よりも、犬の名前の方を知っている人も少なくない。
リリーとムクは、大変仲が良かった。
二匹はよくとびまわって、じゃれていた。
ムクの朝の散歩は、私どもがする。
夕の散歩は、向いのお父さんがしてくれる。
前はリリーと一緒に、散歩していたが、最近は、高齢のためリリーは、
行かなくなっていた。
しかし、夕の散歩のあとは、今までと同じようにリリーは、ムクと一緒に
ジャーキーを食べた。
20mくらいしか歩けないリリーであったが、元気であった。
胸のあたりを調べるにあたり、手術をすることになった。
そこで、思いがけず、膀胱、尿管に腫瘍が発見された。
かなり大きいものが。
処置しても、そんなに長くは生きられない。
苦しみもする。
やむを得ず。やむを得ず。
リリーは、麻酔のかかったまま、そのまま亡くなった。
リリーは、本当に、沢山の思い出を残していってくれた。
メスらしく、やさしい顔立ちであった。仕草も何もかも、やさしかった。
ご家族の落胆ぶりは、相当なものであった。
直後は、食事がとれなかった。
ご家族に、慰めのことばらしきことは言ったが、何の役にも立たなかった。
ダンボールの中に、花が添えられてあった。
リリーは、いつもの通りの、やさしい顔であった。
なでてやった。あたたかかった。
いつも、磨いてもらっている歯の白さが目立った。
有る程の菊投げ入れよ棺の中 漱石
リリーは、玄関の段を登り降りできなくなっていた。
ご家族がよく抱えた。
向いのお母さんが言った。
手にリリーの重さが残っている。その重みが消えない と。
家族(ペット)の重み、たった10kgほどだが とてつもなく重かった。
リリーちゃん、楽しい思い出を 本当にありがとう。
ありがとう。 ありがとう。