「 NHK短歌 1月号 」 2010 No.154 日本放送出版協会発行
すっかり、 澄み切った 、 冬のよく晴れた日のように 。
違和感すら気づかなかったほどだが、 その違和感を確認し、
違和感は、取り除かれた。
斎藤茂吉の一首、
のど赤き玄鳥ふたつ屋梁にゐて
足乳ねの母は死にたまふなり
高校生ぐらいのときの教科書にあった歌だ。
何かすっきりしないままであったが、そのままで忘れてしまっていた。
が、 この 1月号に 明快な答えが載っている。
歌のあるエッセイ 村木道彦
「眼差しの深さということ」
「なぜ『ふたつ』」 と、茂吉はいったのか。
「玄鳥」の震えて止まぬ赤い喉に、「いのち」を見た 。
「いのち」の数え方は、「ひとつ・ふたつ」のほかにあるはずもなかった。
死の床に横たわる「母」。この時茂吉の眼差しは深い。
(そうだ、 この「ふたつ」がわからず、違和感となっていたのだ。
関心のある方は、ぜひ原文を見ていただきたい。素晴らしい。)
村木道彦氏のこの文章を読んで、この一首が晴れて、大きくなって、
はっきりと 私の心に響くもの となった。