
元旦に配達された 新聞 と チラシ

「現代科学と人間」 湯川秀樹著 岩波書店発行
(著者は日本初ノーベル賞受賞者)
こどもは、おとなから見れば、結構「むだ」なことばかりしている。
「なんだね、この子は変なことして」などとは、よくいったり、思ったりするが、
成長のためには、必要なことがほとんどである。
こどもは、何度も同じ失敗をして学んでいく。
前掲の著書には、科学の発展と「むだ」について触れている。
抜粋する。
「むだ」ということ
人生には「むだ」がつきものだ。お正月の数日間など「むだ」だと思う人も多いであろう。
いつもよりページの多いお正月の新聞の中の、私のこの随筆など「むだ」の最たるもので
あるかも知れない。しかし人間は年がら年中、ぎりぎり決着の所で生きてゆくわけには
いかない。適度の「むだ」があってはじめて人生にゆとりができる。それどころか「むだ」
の中にはむしろ必要なもの、不可避なものさえある。
略
研究ということには、その本質的性格に伴って、ある程度の「むだ」をさけることができない。
全然「むだ」をしたくないのなら、だれかが成功した通りを真似するほかない。それはもはや
研究ではないのである。科学の先進国というのは、どれも研究段階で相当の「むだ」を
惜しまなかった国である。ところが研究段階での「むだ」を惜しんでいた国は、結局別の
所でもっともっと大きな「むだ」をしなければならなくなっているのである。研究段階での
「むだ」は全部、よその国にしょいこんでもらっていると、いつまでたっても後進国にとど
まることになる。そればかりではない。研究の段階である程度の「むだ」はあっても、
できうる限り色々な可能性を追求しておくことが、前途の大きな危険を避け、正しい
道を選ぶのに、非常に役立つのである。
略
知的で示唆に富んだ、素晴らしい文章だ。
「むだ」のない、美しい文章だ。
ひょっとしたら、「むだ」なことって、あまりないのかも知れない。
そう思えば、心持ちも少し落ち着くではないか。