
読売新聞 朝刊 平成20年12月20日
経済成長に急ブレーキがかかっている。
高度成長のときは、2桁の成長があったが、ここのところ数%程度である。
江戸時代約260年間における経済成長は、今日からみれば、ほとんど0%に近いものであろう。
この間、内容は充実してきているが、江戸庶民は、ほとんど借金生活であり、将来の貯蓄など
はないのである。
しかし、文化・技術では、かなりの成長をしている。
神社・仏閣の建築、絵画、陶器、織物、硝子細工、漆器、農業、園芸、食文化など
いいものが生まれている。
数学も庶民の間で、遊び感覚で行われていたと言われる。
明治維新(1868年)前後の日本、欧米に比べればかなり遅れていたが、このころ日本に
来た彼らは
「貧しいのに、何と明るくいきいきしており、自然の豊かな国であり、
子供たちを大事にしている国だ。」
と異口同音に言っている。そして、陶器のクッションであった浮世絵がヨーロッパで
受け入れられ、印象派のゴッホにも影響を与え、ジャポニズムが起こる。
明治維新前後の日本人の識字率は、国平均で約50%(男性70%、女性30%)、当時の
ロンドンでさえ20%であった。イギリス人は、江戸の人たちが本屋で立ち読みしているのを
見て驚いたのだ。自国にはない光景であった。
日本人は、江戸時代、(海外のものも多少入っているが、)日本独自の文化を練り上げていった。
明治以降の発展は、この土台があったればこそである。
かえって、経済成長がない方が、文化は成長するのかも知れない。
何もすることがないから、遊び、 遊びの中から文化が成長する。
経済成長と文化成長は反比例か。
しかし、文化成長するには、昔の人がそうであったように、苦しい生活に耐えねばなるまい。
そして、その覚悟が必要だ。