害虫
「害虫の誕生 虫からみた日本史」
瀬戸口明久著 筑摩書房発行 ちくま新書
害虫を科学史の視点から捉えた本が出た。
ゴキブリ、ガ、ハエ いろんな虫がいるが、
昔の日本には「害虫」ということばはなかった。
害虫ということばは、明治の後半からである。
江戸時代、虫は自然に発生し、天災と同じ避けられないものと
考えられていた。 人々は、虫除けにお札を立てたりしていた。
ゴキブリが多いと金がたまると、いわれたときもあった。
食物が豊富で冬でも暖かい裕福な家にゴキブリは定着する。
「コガネムシは金持ちだ。」のコガネムシは、チャバネゴキブリ
のこと。
などとある。
実に、興味深い。 農薬がなかった時代を思えば、
そうであったのであろう。
農薬のある今の時代の姿を、我々は、当たり前と考えてしまうが、
そうでないことが、当たり前のときもあったのだ。
私のご幼少のころ、昭和30年代は、ハエなどたくさんいた。
(他の生き物、フナ、カエル、アメンボウ、ゲンゴロウなども)
汲み取り式便所に、ウジ虫がたくさんいて、これを退治するため、
地域や婦人会を通じて、各家庭に白い液体の薬が配布されたり
した。
蚊帳(かや)や蝿帳(はえちょう・はいちょう)なるものもあった。
若い人は、蝿帳は分からないでしょうね。 実物がないですものね。
ちょっと汗ばむころ、ブーンとやってくる蝿(ハエ)は、音とともにイライラ
したものです。
五月の蠅と書いて、 五月蝿(うるさい) と読んだりします。
明治、大正、昭和初期には、文学にも、しばしば蝿は登場する。
梶井基次郎の 「冬の蠅」 は、 名文だ。
関連記事