漱石忌

ヒロさん

2009年12月09日 00:11




   「漱石の想い出」   角川文庫
      夏目鏡子 (漱石の妻)
      松岡譲 筆録 (漱石の娘婿、長女筆子の夫)

12月9日は、夏目漱石の命日、 漱石忌 である。

この「漱石の想い出」には、漱石の臨終のことが書かれている。
大正5年(1916年)12月9日(土)、子供たちは学校へ行ったものの、
父親漱石の容態が芳しくなく、呼び戻されたり、気になって帰ってきたりした。

  そのうちちで二番めの娘は長女と同じく女子大学の付属女学校に
  行っているのですが、学校へ出たもののどうしても気が気でなくて
  落ち着いて教室にいられないと言って早くかえって参りました。
  そこでその子と近所の小学校へ行ってる四番めの娘とがまず
  会いに行きました。するとあんまり面変わりがしているので悲しく
  なったのでしょう。愛子というその四番めの娘がたまらなくなって
  泣き出しました。で私がこんなところで泣くんじゃないとなだめますと、
  それがきこえたとみえて、目をつぶったまま、
   「いいよいいよ、泣いてもいいよ」
  と申しました。
    略
  正午ごろ打ちそろって会いに参りました。すると
  学校の制服を着た長男の純一がバタンと枕もとに座りました。
  と、ふと目をあけまして、子供の顔を見ながらにゃあっと笑いました。


このあと、すでに大勢駆けつけているが、中村是公や高浜虚子が来る。


臨終のまぎわ、漱石は 泣く子供たちに対し、

   「いいよいいよ、泣いてもいいよ」

と言ったのでした。

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